自律神経活動を活用した
ソリューション
自律神経活動は人の心や身体と密接に関係していて、人の状態を推定することに役立つ生理指標です。
自律神経系活動と人の状態の関係
わたしたちの心や身体は自律神経と密接に関係しています。

人の状態推定ソリューションサービス Remote Engagment & Care(REC)
センタンでは、心拍データを活用し、交感神経と副交感神経のバランス等を定量化することで、人の心と身体の状態を知る仕組みを研究開発しています。
■ 無意識の心や身体の状態を指標化
自律神経活動を反映する心拍の変動データと様々な実験結果を元に、人の状態を推定するアルゴリズムを開発し数値化しています。

- 心拍数(HR)の増減
- 心臓の活動は交感神経と副交感神経から2重に影響を受けている。
心拍数の増加は交感神経の活性あるいは副交感神経の抑制によって起こり、短期的には身体的活動や興奮、緊張などによって生じる。
- 心拍変動(HRV)の増減
- rPPGで計測可能なRMSSDという心拍変動指標は副交感神経の活動を反映する指標として広く知られている。
この値の減少は短期的には緊張や興奮などによって生じる。
ご注意:本システムにて表示する情報は、測定結果により特定の傷病や疾患を診断する意図はなく、医療機関での診断に代わるものではありません。また、独自のアルゴリズムで推定しており、測定結果は使用条件により異なり、個人差があります。
■ 開発Step
センタンでは、下記のようなStepで生体データを活用したソリューションを開発しています。

■ 社内検証実験
先行知見を参考に、状態推定アルゴリズム作成に向けて自社で下記のような実験を実施しました。
説明と同意の取得 | ベース ライン |
課題1 | 安静 | 課題2 | 安静 | 課題3 | 安静 | 課題4 | 安静 | 終了案内 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
5min | 10min | 45min | 10min | 45min | 10min | 45min | 10min | 45min | 10min | 5min |
長時間計測には日内変動の影響が出てくるため、課題の効果を見るために課題順についてはカウンターバランスをとる
合計240min(4時間)
- 安静中は基本的に座って自由にしてもらう(スマホ操作などok) 寝ることはNG
課題(4種類)
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集中が必要な課題
5分間説明、練習10分、25分間動画内の人物の行動コーディング(15分間の動画を2回繰り返し)
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ストレス誘発課題
10分説明、5分模擬面接課題、5分発表
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フロー状態誘発課題
10分説明、15分計算課題、5分休憩、15分計算課題
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リラックス誘発課題
45分自由に動画視聴
RECで推定できる人の状態 3種類
集中/フロー状態
■ 先行研究
心拍など心臓血管系指標と集中/フロー状態との関係を示す先行知見
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安静時のHRV(RMSSD)が高くなるほど、注意課題のパフォーマンスが高くなる。
Siennicka, A., Quintana, D. S., Fedurek, P., Wijata, A., Paleczny, B., Ponikowska, B., & Danel, D. P. (2019). Resting heart rate variability, attention and attention maintenance in young adults. International Journal of Psychophysiology, 143, 126–131. https://doi.org/10.1016/J.IJPSYCHO.2019.06.017
-
集中力弛緩学生群は、講義時間が進むに連れてRRIの値が上昇している。これに対して、集中学生群は、 講義が進んでもRRIの変化は上昇しないで、安定した変化であった。
高津 浩彰, 小関 修, 心拍変動を用いた講義の集中度の評価の試み, 豊田工業高等専門学校研究紀要, 2006, 39 巻, p. 149-152, 公開日 2017/04/27, Online ISSN 2424-2276, Print ISSN 0286-2603, https://doi.org/10.20692/toyotakosenkiyo.KJ00004687326
■ 実験結果・アルゴリズムの開発
アルゴリズムの概要
rPPG信号からHR、RMSSDを算出して、合成変数を作成し、基準点との比較を行うことにより、集中・フロー状態を推定する
推定結果アウトプット例
横軸が時間帯、縦軸が当該状態になった頻度を表しています。
▼状態変化の確認
- 月/水/金は前半時間に集中/フロー状態になりやすい
- 水曜日は1日を通して集中/フロー状態になりやすい
- 金曜日の後半時間は集中/フロー状態になりにくい
▼対策の実施
- 集中/フロー状態での必要な作業は月/水/金の午前中に
- 集中/フロー状態になりにくい時間帯に必要な業務がある場合は、準備を念入りに
状態変化の把握と対策を講じることで、集中/フロー状態の活用や業務改善に役立てることが可能
緊張/興奮 (stress) 状態
■ 先行研究
心拍など心臓血管系指標とストレス(緊張/興奮)状態との関係を示す先行知見
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職場ストレスの中に、個人の心理的状態(マインドフルネス、自己効力感など)、およびパフォーマンスとポジティブな相関を持つものも存在している。
Hargrove, M. B., Nelson, D. L., & Cooper, C. L. (2013). Generating eustress by challenging employees: Helping people savor their work. Organizational Dynamics, 42(1), 61–69.
https://doi.org/10.1016/J.ORGDYN.2012.12.008 -
コントロール条件と緊急事態条件の心拍・HRV指標の変化パターンが異なる。
Balters, Stephanie & Geeseman, Joseph & Tveten, Ann-Kristin & Hildre, Hans & Ju, Wendy & Steinert, Martin. (2020). Mayday, Mayday, Mayday: Using Salivary Cortisol to detect Distress (and Eustress!) in Critical Incident Training. International Journal of Industrial Ergonomics. 10.1016/j.ergon.2020.102975.
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Hughes et al. (2019)のメタ分析では、心拍、血圧、心拍変動と精神作業負荷の関連が検討されている
効果量と信頼区間を見ると、心拍数は課題種類による影響があるかもしれない※Cognitive Taskでより亢進Hughes AM, Hancock GM, Marlow SL, Stowers K, Salas E. Cardiac Measures of Cognitive Workload: A Meta-Analysis. Hum Factors. 2019 May;61(3):393-414. doi: 10.1177/0018720819830553. Epub 2019 Mar 1.
■ 実験結果・アルゴリズムの開発
アルゴリズムの概要
rPPG信号からHR、RMSSDを算出して、合成変数を作成し、基準点との比較を行うことにより、緊張/興奮 (stress) 状態を推定する
推定結果アウトプット例
横軸が時間帯、縦軸が当該状態になった頻度を表しています。
▼状態変化の確認
7月から8月で以下の変化が確認できる
- ストレス状態の総量が増加
- 特に月曜日前半、木曜日中盤時間帯にストレス状態が強く表れるようになっている
▼原因の特定・対策の実施
自覚有無、原因、業務の偏りなど確認が必要
- 日別データの確認
- 当該日の予定との関係性の確認など
原因の特定と対策を講じることで、ストレスへの対処法やストレスを回避する業務計画などが可能に
ぼんやり状態
■ 先行研究
心拍など心臓血管系指標とぼんやり(鎮静/眠気)状態との関係を示す先行知見
-
心拍など心臓血管系指標とぼんやり(鎮静/眠気)状態との関係を示す先行知見。
心拍変動は、総睡眠剥奪時の精神運動性覚醒における眠気に関連する減衰を推定するために使用できる。Chua, E. C., Tan, W. Q., Yeo, S. C., Lau, P., Lee, I., Mien, I. H., Puvanendran, K., & Gooley, J. J.
https://doi.org/10.5665/sleep.1688 -
心拍変動を用いたドライバーの疲労検出:系統的レビュー
Lu, K., Sjörs Dahlman, A., Karlsson, J., & Candefjord, S.
https://doi.org/10.1109/TITS.2018.2868499 -
瞬目時間と閉眼率は眠気状態とロバストの関係性を持ち、良好な精度で眠気状態を予測できる。
Cori, J. M., Anderson, C., Shekari Soleimanloo, S., Jackson, M. L., & Howard, M. E.
https://doi.org/10.1016/j.smrv.2019.03.004
■ 実験結果・アルゴリズムの開発
- ベースライン区間:被験者が「ノーマル状態」と想定されている区間。
- ターゲット区間:ベースライン区間の生体データと比べ、変化したかどうかを判定。短いほど判定がセンシティブになる。最低1分間が必要。
- 遅延:生体データの変化と主観の変化の時間差、センタン自社の調査のデータにより、一般的には主観で変化を気付く1min前に生体データの変化が発生する。
アルゴリズムの概要
- 1分ごとの心拍数の時系列を取得
眠気判定に必要なデータが蓄積されるまで待つ - 1分ごとの心拍数時系列から1分ごとに眠気判定を行う
- 1分ごとの眠気時系列から1分ごとの継続的眠気時系列を導出する
- 1分ごとの継続的眠気時系列の表示の遅延と遅延の間に眠気が覚めていないかのチェックを行う
推定結果アウトプット例
横軸が時間帯、縦軸が当該状態になった頻度を表しています。
▼状態変化の確認
7月から8月で以下の変化が確認できる
- 月曜日 7月に比べて8月のぼんやり状態時間が長くなっている
▼原因の特定・対策の実施
自覚有無、原因、業務の偏りなど確認が必要
- 日曜日の状態変化の確認など
原因の特定と対策を講じることで、ぼんやり状態の対処法や回避する業務計画などが可能
活用シーン
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デスクワーク中の従業員の状態把握に
業務中の生理情報をリアルタイムに把握して、長時間のストレス状態・ぼんやり状態の時には適切な介入を行い従業員の状態改善に役立て、集中/フロー状態の時には余計な介入をしないなど、各従業員の生産性向上のサポートデータとして活用できます。
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製品やサービス評価の指標の1つとして
アンケートなどの製品・サービス評価に生理情報を追加することで、被験者自身が言語化・顕在化できない被験者情報(例えば、快/不快など)を取得でき、より深い理解や解釈のサポートデータとして活用できます。
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健康管理の参考情報として
継続的に計測した生体データから心拍の変動状況、ストレス状態の変動状況などを可視化し、専門家との面談時に利用可能です。健康診断データと合わせて確認することで、自身の生活週間の改善などのサポートデータとして活用できます。
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予測アルゴリズムなどの追加変数として
アンケート結果や各種データなどを元に作成したアルゴリズムに生体データを加えることで、アルゴリズムの精度向上やAIと組み合わせて新しいアルゴリズムの開発などに活用できます。