みなさんは、読書や映画鑑賞、あるいはゲームなどに没頭している時、「あっ」という間に時間が過ぎていた、という経験はありませんか?このような時、私たちは「フロー状態」にあると言えます。
この記事では、フロー状態とは何か、フロー状態の時に脳内ではどのようなことが起こっているのか、フロー状態のセンシング等についてお伝えしていきます。

時間を忘れるあの感覚:フロー状態

フロー状態とは、活動に完全に没頭し、周囲のことを忘れてしまうような状態を指します。
例えば、画家が一心不乱に絵を描いている時や、スポーツ選手が試合に集中している時などは、まさにこのフロー状態です。
この状態は、チャレンジと自分のスキルがマッチしている時に生じやすく、時間の感覚を失い、自分自身の存在すら忘れてしまいます。1980年代に心理学者ミハイ・チクセントミハイ(1)によって広く知られるようになったフロー状態は、私たちの集中力、生産性、そして創造性を格段に高めることができます。

フロー状態の内側を明らかにする認知神経科学

フロー状態の時、私たちの脳内では一体何が起こっているのでしょうか?人の心理や行動のメカニズムを脳の働きから理解しようとする研究分野である認知神経科学の研究によって、フロー状態の脳の働きが明らかになりつつあります。
MRI装置を用いたウルリッヒらの研究(2,6)では、フロー状態の際には、タスクをコントロールしている感覚に関連した前頭前野下部や、報酬や快感に関連する線条体などの脳領域の活動が活発になることが報告されています。逆に自己意識やネガティブな感情に関連する内側前頭前野や扁桃体などの脳領域の活動は低下します。
これらの結果は、フロー状態が単なる心理的な現象だけでなく、脳の特定の活動パターンと密接に関連していることを示しています。私たちがフロー状態に入っている時、脳のいくつかの領域が働いて、今行っていることに集中し、満足感を感じて、自分の存在を忘れるくらいの状態になっていると考えられます。このような認知神経科学研究の知見は、将来的にフロー状態をより効果的に引き出す方法を開発するための基盤となる可能性があります。

生体信号計測によるフロー状態のセンシング

近年の生体信号計測技術の進歩により、MRIのような大掛かりな装置を使わずにフロー状態のセンシングが可能になってきています。
例えば、脳波(3)、心電図(4,5)、血圧(5)、皮膚電気活動(6)などがフロー状態の指標として研究されています。これらの生体信号は、特定の心理状態と関連しており、フロー状態における脳と身体の相互作用をより詳細に理解するための重要な手段となっていくと考えられます。
将来的には、生体信号計測技術によって個人のフロー状態に関わる脳や身体の状態をより正確に測定し、その時の状態に応じてタスクや環境をリアルタイムに調整するといったことが可能になるかもしれません。

まとめ

今後、生体信号計測技術を活用して個人のフロー状態をより正確に測定し、学習、仕事、スポーツなどの様々な分野でパフォーマンスを向上させるようなフロー状態促進技術の開発が期待されます。

センタンでは、脳波や心拍、唾液、皮膚電気活動などの生体情報の計測・解析から、ヒトの状態や影響などを深く知るサポートを行っています。生体データの利活用支援や様々な課題解決に繋がる研究・開発支援(受託研究)が可能ですので、お気軽にお問い合わせください。

引用文献

  1. ミハイ・チクセントミハイ. (1996). フロー体験 喜びの現象学. 今村浩明(訳) 世界思想社.
  2. Ulrich, M., Keller, J., Hoenig, K., Waller, C., & Grön, G. (2014). Neural correlates of experimentally induced flow experiences. Neuroimage, 86, 194-202.
  3. Leroy, A., & Cheron, G. (2020). EEG dynamics and neural generators of psychological flow during one tightrope performance. Scientific reports, 10(1), 12449.
  4. Chin, M. S., & Kales, S. N. (2019). Is there an optimal autonomic state for enhanced flow and executive task performance?. Frontiers in psychology, 10, 1716.
  5. De Manzano, Ö., Theorell, T., Harmat, L., & Ullén, F. (2010). The psychophysiology of flow during piano playing. Emotion, 10(3), 301.
  6. Ulrich, M., Keller, J., & Grön, G. (2016). Neural signatures of experimentally induced flow experiences identified in a typical fMRI block design with BOLD imaging. Social cognitive and affective neuroscience, 11(3), 496-507.

● 引用・転載について
  • ・当コンテンツの著作権は、株式会社センタンに帰属します。
  • ・引用・転載の可否は内容によりますので、こちらまで、引用・転載範囲、用途・目的、掲載メディアをご連絡ください。追って担当者よりご連絡いたします。

● 免責事項
  • ・当コンテンツは、正確な情報を提供するよう努めておりますが、掲載された情報の正確性・有用性・完全性その他に対して保証するものではありません。万一、コンテンツのご利用により何らかの損害が発生した場合であっても、当社およびその関連会社は一切の責任を負いかねます。
  • ・当社は、予告なしに、コンテンツやURLの変更または削除することがあり、また、本サイトの運営を中断または中止することがあります。

Contact

お問い合わせ

センタンへのサービスに関するご相談はこちらよりお問い合わせください