受託研究 Case #15

クライアントジャンル:大手消費財メーカー様

製品の「使い心地」をサーストン法で間隔尺度化。主観評価の限界を超え、次世代デバイスの最適パラメータ(重量・重心)を導き出したエビデンス取得事例



背景:従来のUI/UX評価における課題


大手消費財メーカー様では、次世代携帯デバイスの開発にあたり、ユーザーが直感的に「使いやすい」「手に馴染む」と感じる最適な筐体設計(重量と重心位置の組み合わせ)を模索されていました。


しかし、従来の5段階評価などの絶対評価アンケートでは、「どれも使いやすい」「違いがわからない」といった天井効果が生じやすく、製品間の微小な差を弁別することが困難でした。



科学的エビデンスの必要性


ユーザー自身も「なぜそれが使いやすいのか」を明確に言語化できず、設計パラメータ(重さや重心位置)に紐づく科学的なエビデンスが得られないという課題を抱えていました。



実施概要

目的 本プロジェクトにおける研究課題は、「ユーザーが潜在的に感じている微細な『魅力度・使い心地の差』を定量的に可視化し、最適な形状・重量・重心の組み合わせを特定すること」に設定されました
実施概要 特定の日常習慣を持つユーザーを対象に、12種類のプロトタイプ(形状2種 × 重量3種 × 重心位置2種)を用意し、1対比較法(サーストン法)による行動評価を実施しました
サンプル数 20■名
分析指標 行動評価データ、1対比較データ(間隔尺度)

心理課題(行動評価×サーストン法)の選定理由

 

単純なアンケートではなく、被験者に「胸元から口元へ運ぶ、数秒キープする、腕を下ろす」という実際の使用動作を伴わせた上で、2つのモックアップを直感的に比較させる手順を全6■パターンの総当たり戦で実施しました。
また、評価へのバイアスを排除するため、定性的な自由記述(FA)はすべての行動評価が終了した後に、自身が最も高く評価したプロトタイプを提示した状態で聴取するデザインとしました。

評価手法の選定理由

サーストン法を採用した理由は、比較対象間の心理的距離を「間隔尺度」として1次元の連続体上にマッピングできる点にあります。絶対評価では見過ごされがちな「AとBの差」と「BとCの差」の大小関係を統計的に推定可能となり、人間の感性という曖昧な主観を、解釈可能な科学的データへと変換することができます。

4. 分析結果:データが明かした無意識の反応

 

全被験者の1対比較データを解析し、サーストン図表にプロットした結果、単なるアンケートでは見えなかったユーザーの潜在的な嗜好と「評価のコンテキスト依存性」が浮き彫りになりました。

【1】全体評価とカテゴリ内評価の逆転現象

全体(N=20■)を通した評価では、上位1位〜3位までを「形状A(スリムタイプ)」が独占し、「形状B(ボックスタイプ)」は相対的に低い心理的価値に留まりました。

しかし、興味深いインサイトとして、「形状B」のプロトタイプ群の中だけで比較解析を行った結果、全体評価では下位に沈んでいた特定の重量・重心の組み合わせ(条件S)が1位となり、全体傾向とは逆転する現象が確認されました。これは、ユーザーの「使い心地」という感性が絶対的なものではなく、比較されるコンテキスト(カテゴリの枠組み)によってダイナミックに変化することを示しています。

【2】属性による嗜好の分岐

男性(N=10■)と女性(N=9■)の層別解析においても、特定の重量・重心に対する受容度に明確な差異が間隔尺度上で確認され、ターゲットセグメントごとに「最適なフィジカル体験」が異なることがデータとして実証されました。

5. 結論と次へのアクション(改善へのフィードバック)

 

結論:本実験が示したエビデンスと重要なインサイト

本実験により、従来の主観的絶対評価では可視化できなかった「重量×重心位置がもたらす微小な使い心地の差」を間隔尺度として定量化することに成功しました。これにより、「なんとなく使いやすい」という定性的な評価が、設計に落とし込める具体的な数値エビデンスへと昇華されました。

具体的な改善アクション(例)と今後の展望

  • プロトタイプ設計の絞り込み
    全体で高い支持を得た「形状A」の特定パラメータをベースモデルとしつつ、別ラインナップとして「形状B」を展開する際は、全体評価の順位ではなく「カテゴリ内比較で1位となったパラメータ(条件S)」を最適解として採用することで、各形状のポテンシャルを最大化できます。
  • ターゲットごとのパーソナライズ
    男女別・年代別で確認された嗜好の差異を基に、メイン・ターゲット層の身体特性(手の大きさ等)に最適化した重量バランスのバリエーション展開、あるいはユニバーサルデザインとしての重心設計の再考を推奨します。
  • 次期フェーズにおける生理指標の導入
    今回は一連のルーティン動作と心理的評価を掛け合わせましたが、今後の実機開発フェーズにおいては、表面筋電図(EMG)を用いて腕や指先の筋肉の疲労度を計測する生理指標アプローチを組み合わせることで、「主観的にも使いやすく、身体的ストレスも少ない」という究極のUIデザインを追求することが可能です。

その他の事例

【プロダクトデザイン・UI/UX領域】 製品の「使い心地」をサーストン法で間隔尺度化。

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【感性工学・ニューロマーケティング】 主観アンケートでは見えない「無意識下の自律神経の早期安定」を実証

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無意識下の注意機能向上を可視化

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「超微量の微細気化吸入は、自覚症状(主観)に現れずとも、ミリ秒単位の高度な認知リソース制御(無意識下の身体・行動反応)に対して確かにポジティブな影響を与えているのか?」という仮説(問い)を、専門的な認知心理学タスクを用いて科学的に検証することとした。

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